Chapter 2 Remnants
セバスチャンの手記
2004年11月
ようやくゴールドバッジを手に入れた
─セバスチャン・カステヤノス刑事─
悪くない響きだ
昇進までは長い道のりだったが
周りは異例の早さだと言う
勤務開始が待ちきれない
俺にとって 刑事は天職だ
何より あの制服を着なくていい
給料アップも悪くない
……KCPDは もっと多くの助けを必要している
近頃は事件が多過ぎる
このクリムゾンシティを守るのが 俺の仕事だ

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※原文のままです。
Chapter 2 Remnants
セバスチャンの手記
2004年11月
ようやくゴールドバッジを手に入れた
─セバスチャン・カステヤノス刑事─
悪くない響きだ
昇進までは長い道のりだったが
周りは異例の早さだと言う
勤務開始が待ちきれない
俺にとって 刑事は天職だ
何より あの制服を着なくていい
給料アップも悪くない
……KCPDは もっと多くの助けを必要している
近頃は事件が多過ぎる
このクリムゾンシティを守るのが 俺の仕事だ
Chapter 3 Claws of the Horde
セバスチャンの手記
2004年12月
刑事として初の勤務日
俺の新しいパートナー マイラ・ハンソン
粘り強く勤勉で 怒らせたやつは痛い目に遭う
いい女だが 彼女といるときは油断できない
今日も 彼女の尻を眺めているのが
バレそうになった
Chapter 4 The Patient
セバスチャンの手記
2005年2月
今日の午後 マイラが殺されかけた
俺たちが追跡中だった犯人に撃たれた
その場に俺がいて良かった
彼女は きっと回復するだろう
血を流している彼女を見ながら俺は考えていた
自分の気持ちも伝えないまま彼女を失ったとしたら
俺には耐えられない
きっと 彼女だって同じように感じているはずだ
俺の勘が そう訴えてくるんだ
こんなのは俺らしくもないが 彼女に気持ちを
伝えなければ
グズグズしている場合じゃない
Chapter 5 Inner Recesses
セバスチャンの手記
2005年3月
悪いニュースがひとつ
パートナーが変えられた
良いニュースがひとつ
マイラが イエスと言ってくれた
悪いニュースの方も そう悪くない
ジョセフは素晴らしい刑事で
お互い上手くやれそうだ
クリムゾンシティには もっと彼のような
頼りになる男たちが必要だし
一緒に働けることを 光栄に思っている
……ときどき まるで船底に穴の開いた
ボートに乗って バケツで水を掻き出している
ような気分になる
ひとつ事件を解決しても 別の10件が待ち受けている
KCPDは市民を犯罪から守る盾だが……
それは時に ひどくちっぽけに思える
セバスチャンとマイラの結婚式の招待状
セバスチャン・カステヤノス
マイラ・ハンソン
この度 わたしたちは結婚することになりました
心ばかりの祝宴に ご臨席賜りますよう
お願い申し上げます
日時 2005年9月17日 午後12:30〜
場所 The Veranda Hotel. Krimson City
レセプションは挙式後となりますので
こちらもご出席お願い申し上げます
Chapter 6 Losing Grip on Ourselves
セバスチャンの手記
2006年5月17日
マイラと結婚して8ヶ月
二人の愛の結晶 それが君だよ リリー
あと2ヶ月で君に遇える
早く君の顔が見たい
ただ ちょっと不安だ
仕事では 多くの危険に遭い乗り越えてきたが……
自分が父親になるという現実は やはり慣れん
俺が生きてる限り
全てを捧げて君を愛し
守ることを誓う
この人生の新たなステージでも
俺は変わらないやり方で向き合いたいと思う
全身全霊をかけ ベストを尽くす
お母さんとお父さんは 君をとても愛しているから
安心してほしい
時には厳しい世の中だけど 君を迎えられる日が
待ち遠しくてたまらないよ
Chapter 7 The Keeper
リリーの誕生カード
名前: リリー・リン・カステヤノス
誕生: 2006年7月18日 午前9時56分
体重: 7ポンド3オンス
身長: 14インチ
両親: セバスチャン&マイラ・カステヤノス
Chapter 8 A Planted Seed Will Grow
セバスチャンの手記
2009年6月16日
今朝はリリーを幼稚園まで送ってきた
初登園の日
リリーは物怖じせず 新しい環境にすぐに
慣れたようだ
この3年はリリーにつきっきりで
マイラも大変だったと思う
これで彼女も
ちょっとは楽になるだろう
楽になる といってもKCPDの行方不明者
捜索担当に復帰するという意味だが
行方不明者の数が増え続けている
このままだと 全市民が行方不明者に
なってしまうペースだ
大げさかもしれないが この街で何かが
起きているのは間違いない
マイラの能力は恐ろしく高いし
仕事に復帰できてモチベーションも高い
きっと彼女が捜索の力になってくれるだろう
Chapter 9 The Cruelest Intentions
Krimson Cityの新聞記事の
クリッピング
悲劇的な火災 少女と乳母が死亡
2012年1月11日
昨日午後 クリムゾン市郊外のパークリッジの
住宅街で火災が発生した
すぐに消防が駆けつけ必死の消火活動を
行ったが 家屋は全焼
少女とベビーシッターの命が失われた
リリー・カステヤノス(5歳)と
ベビーシッターのファニータ・フローレス
(56歳)は 家屋を呑み込んだ煙と炎によって
逃げることができなかった
なくなった少女の両親はともにKCPDに勤務する
刑事で 現場に駆け付けたがすでに手遅れだった
消防による消火活動は 数時間に及んだが
家屋は全焼した
出火原因は調査中だが 電気配線のショートに
よるものと思われる
<8面に続く>
Chapter 10 The Craftsman's Tools
セバスチャンの手記
2012年2月27日
友人や戦友が死んでいくのは 何度も見てきた
自ら選んだ仕事には付き物だ
決して慣れたりはしない
しかし 我が子を失う辛さは 比べ物にならない
なかったことにできるなら 俺は100万回
死んでもいいのに
小さな棺が地面の下に降ろされたとき
俺はとてつもない無力感に襲われた
この心の痛みには これ以上耐えられない
そうするべきではないという自覚はあったが
この数週間は酒を飲まないと眠れななかった
マイラのことが心配だ
最初のショック状態が過ぎて
嘆き悲しむ彼女の様子は……普通じゃない
ひとりきりになりたがり 一晩中眠らない
悲劇を忘れるために仕事をしていると言うが
まるで現実から 逃れようとしているみたいだ
子供を失った夫婦が どうなるかは知っている
そうならないようにこの苦難を マイラとともに
乗りこえたい
Chapter 11 The Reunion
セバスチャンの手記
2012年7月11日
あの事故から半年が経った
マイラとの距離が どんどん開いていくように
感じる
俺がしっかりしなければいけないのに
ウイスキーに溺れて考えるのを止めてしまう
……仕事に影響さえ出なければ
それは俺の個人的な問題だ
あの事故について やっとマイラが口を
開いてくれた
彼女のことが ますます心配になってきた
マイラが誇大妄想に取り付かれ
心が壊れかけているとしても
あるいは彼女が正常で その主張通りに
“あの火災は単なる事故ではない”としても
……いずれにせよ 救われない話だ
できれば彼女を信じたいが
もしそれが事実なら……
俺は犯人を 絶対に許さない
セバスチャンの手記
2012年8月
ただでさえプライベートと仕事で限界なのに
新米の教育係まで押し付けられた
キッドマンは若くて青臭い
最近の新人によくある権利意識が彼女にもある
俺が少しでも“ルールから外れた”ことを
するたびに 何か言いたげな顔で見る
教科書通りのやり方だけではダメだということを
理解しようとしない
性格的には 冷淡で よそよそしい
俺たちの動きを見てバックアップに回るのが
彼女の仕事だが まるで実験台を見る研究者の
ように感じるときがある
俺たちから学ぶというより
ただ“観察している”ように……
自分のなかの何かが 彼女に警報を発している
ジョセフは俺が気にし過ぎだと言う
もしかしたら 彼女に惚れているのかもしれない
とにかく彼女といるときは注意を払わねば
Chapter 13 Casualties
セバスチャンの手記
2012年9月1日
マイラが居なくなった
もう何日も連絡がない
職場にも報告したが 彼らは俺が
おかしくなったとでも思っているようだ
彼女の車 コンピューター 私物の一部が
無くなっている
犯罪の臭いは どこにもない
誰もが 俺に愛想を尽かしただけだと思っている
俺の酒癖を批判するやつもいる
……それをマイラの失踪と関連付けようとしている
彼らは事件性を認めず 彼女が居なくなった責任は
俺にあるとでも言いたげな顔で見る
……だが 彼女は俺から逃げたんじゃない
誰かが 彼女を連れ去ったんだ
彼女が何かに近付き過ぎたから
……しかし それは何だ?
Chapter 14 Ulterior Motives
マイラがセバスチャンに残した手紙
最愛のセバスチャンへ
あなたがこの手紙を読んでいるということは
事態は最悪の結末を迎えたのでしょう
それはつまり わたしが真相に
近付き過ぎたということ
そして あなたには二度と逢えないかも知れない
あなたに隠し続けてきたことを許して
でもそれは あなたを守るため
……事件の真相から
わたしの狂気から
わたしが調べた捜査ファイルのコピーを同封したわ
これがあなたの手に届くことがないように
願っている
でももしそうなったときには
あなたに全てを託すわ
お願い 成すべきことを行なって
リリーのために
そして わたしのためにも
あなたを心から愛してる
─マイラ
セバスチャンの手記
2012年12月20日
捜査ファイルが届いた後
マイラからの音信は途絶えた
この書類を上の人間に見せるべきか俺は悩んでる
マイラが到達した結論は 恐ろしいものだった
自分の力ではどうしようもない領域までも
行ってしまうかもしれない
ただ ひとつ言えるのは リリーの死が
事故ではなかったということ
彼らもようやくマイラの失踪も事件と認めたが
俺に関わらせようとしない
俺が家族だからと言うが 俺が犯人かも
しれないとでも思っているんだろう
捜索は取りやめられた
それでも家族のために 俺はひとりでも捜し続ける
Chapter 15 An Evil Within
内部監査記録:カステヤノス刑事
2013年3月13日
フィ:
ここに呼ばれた理由を理解しているか?
カステヤノス:
あんたたちが いい加減な仕事を
しているからだろう
フィ:
君は職務外の捜査を単独で署のリソースを
使って行なっている
さらに 恐喝・脅迫・暴力などの報告も
上がっている
カステヤノス:
証拠があるなら 銃とバッジを取り上げて
いるはずだ
フィ:
君がそれほど用心深くなければそうしていたさ
しかし君のことは ずっと“見ている”よ
カステヤノス:
それは あんたたちだけではない
フィ:
どういう意味だ?
カステヤノス:
俺を嗅ぎ回っていれば すぐにわかる
フィ:
酒浸りのままでいてくれたら余計な手間を
かけずに済むんだがね
カステヤノス:
仕事に戻りたいんだが 用は済んだか?
フィ:
……いまはな
だが君は いま薄氷の上に乗っている
ひとつでも問題を起こせば 君は消えることになる
カステヤノス:
全てが終われば 自分から消えてやるさ
<カステヤノス退室>